MMT理論を用いれば日本経済は一気に上昇する。
そういう期待感を感じる理論なのでそれは良い!という期待を僕は持っていました。そんなMMTを前に進めようとする方と、成田先生が真っ向から意見を交わしたネット番組がちょっとした話題になりました。
さっそく見てみましたが…これが面白い!
ハッキリ申し上げて成田先生の対応が美しすぎて、半沢直樹が相手をギタギタにねじ伏せた時のような迫力すらありますし、経済を語る上での初歩をレクチャーしている先生のようでもあります。
同時に、MMT理論はしばらくまともに相手にされないキワモノに近い位置に行ったような気がしますし、MMT論界隈の人たちは池戸万作をそれでも掲げていくのか、それとも切り捨てるのかの対応次第で、MMT論は陰謀論やオカルトと同じようなものという見方をされ相手にされにくくなる可能性も出てきました。
そんな対談動画をまとめさせてもらいました。
成田悠輔 対 池戸万作の対談が成立するまでの経緯
成田先生が日本経済の良くも悪くも不変のGDPに対して「横ばい力がすごい」と皮肉りました。
これが日本の横ばい力 pic.twitter.com/uO7Uqg0NTZ
— 成田 悠輔 (@narita_yusuke) 2022年12月27日
そのことに対して、池戸氏がバカだと言ったことでネットで注目を浴びました。
(その発言を探したのですが見つけることができませんでした・・・)
それでは是非その根拠を語ってくださいということで、abemaでの対談が実現しました。
池田万作氏の主張
池田氏は日本の横ばい力がすごいのではなくて、日本の経済学者たちがバカだったんだ、なぜなら…ということを下記のように主張されています。
- 日本はGDPが伸びてない
- 竹中時代にGPDの世界シェアが急落
- 政府総支出を増やしてこなかった(年平均1%)
- 政府総支出増加率と名目経済成長率は因果関係にある
- 国には通貨発行権があるんだからどんどんお金を擦れ!
だから国の失策であるとするもので、いわゆるMMT論です。
現代貨幣理論(げんだいかへいりろん、英語: Modern Monetary Theory, Modern Money Theory、略称:MMT)とは、ケインズ経済学・ポストケインズ派経済学の流れを汲むマクロ経済学理論の一つである。
変動相場制で自国通貨を有している国家の政府は通貨発行で支出可能なため、税収や自国通貨建ての政府債務ではなく、インフレを尊重した供給制約に基づく財政規律が必要であるという主張をしている。
MMTはその名の通り現代の貨幣についての理論が支柱となっている。管理通貨制度に伴う政府の通貨発行権に焦点を当て、政府が法定通貨での納税義務を国民や企業に課すことによって、法定通貨に納税手段として基盤的な価値が付与されて流通するという表券主義が基軸である。
これに対して成田先生が意見を聞く中で、いろいろなパワーワードが出されていき、最終的にはコテンパンにされたためネットではちょっとした騒ぎになりました。
成田悠輔 対 池戸万作、対談内容の文字起こし
その対談について、ネット界隈では切り抜かれて都合のいいように解釈するやり方が広がっていますが、それでは前後の文脈が切れてしまいますので、発言をほぼそのまま文字起こししたものを作ってみました。
語尾や微妙な言い回しは違う部分がありますが、ほぼそのままを書き起こしています。
約30分の内容を3分で把握できるはずですので、動画を見る時間がないという方は是非目を通してみてください。
書き起こし
- 通常の書き出しが成田氏
- 一段下がっている部分が池戸氏
なぜ政府支出が増えれば経済が成長したということがわかるのですか?
単純に経済成長をしてない国はお金が入ってこないので政府支出を増やしようがない、ただそれだけの可能性もありますよね?
国には通貨発行権があるから税収から取らなくても政府支出ができる
それで政府支出をしたら経済成長しますという断言が全くわからない
お金を配ることによって個人消費が増えたり民間投資が増えるっていうことですね
なんでそう断言できるんですか?
お金が手元にあったらみなさん使うでしょう
安倍政権の時に一律10万円の給付金をしたら白物家電が売れるようになったからほぼ間違いないと思うし、実際GDPの項目の中に政府支出もありますので公共事業とかやればその分だけ政府支出も増えてGDPも増えるということです
じゃあ日本中の人たちが全員365日休んでいます、何の仕事もしていません、政府は1人1億円お金を刷りました、みんな1億円手に入ります、みんな1億円使いました、経済成長万歳!そういうことですか?
1億円は金額が大きすぎる
1千万円でOKです
年間100万円ぐらいが丁度いいです
100万円でOKです。日本人誰一人働かなくなったとしますよね、政府が新たに1人100万円お金を刷りました、みんなそのお金を使いたいのでそのお金をパチンコに使いました、これで経済成長してみんなが豊かになりましたって仰ってるってことですね
まずパチンコの会社の人が働くんじゃないですか?ってのが1つですけど、まあ、誰も働かないということはない
いやいや、なるかもしれないじゃないですか
仮になったとしますよね
それで経済成長しているって風におっしゃってる風に聞こえるんですがそういうことですか?
そうですね、はい
…みなさんが働かなくなること自体があり得ないわけですから、その仮定自体がおかしいので…
(ワイワイガヤガヤなので中略)
政府がお金を刷りました、それを配りました、みんな働き続けて、同じかそれ以上の経済活動を頑張ってします、みんな貯蓄せずにちゃんとその100万円を使います、しかもみんなが100万円使うようになったのに大したインフレは起きず、物価も安定したままでした
もしこれが全部実現するんだとしたら、確かに経済活動が増えるかもしれないということですよ
ただ今言ったような条件が整う理由なんて何もないじゃないですか
ま、実際韓国とかは政府支出10%ぐらい増やしててもですね、インフレ率は2.5%…
それは韓国がサムスンを作った、BTSを作った、だから稼げるようになった、稼げるようになった国はみんな税金を納めることができる、だから政府支出が増やせるようになった、それだけかもしれないじゃないですか
稼げるようにならなくても政府支出は増やせる…
稼げるようにならなくても政府支出が増やせるのはそうですよ、政府支出が増えたからGDPが増えたっていう因果関係を断言できる根拠が何もない
因果関係は政府支出が先です
自由に通貨発行ができるわけですから
それはそうですよ
自由に通貨発行ができる政府が政府支出をしたら経済成長が高まるって断言できる理由が何もないじゃないですか
ですから配ったら消費は増えるでしょう
(GDPに)政府支出という項目自体もあるわけですし
司会:ものすごく政府支出が多いところとそうでもないところは何の違いがあってそうなったのかっていうことを成田先生は仰っていると思います
みんなそれが(政府支出を増やせば成長する)分かっていればそうしますよね?
そういう風にした国が勝っていくということですね
どんどん経済成長していくし、逆にヨーロッパとか…
それが理由で勝ったかもしれない
だけど、全然別の理由によって経済成長が作り出されていて、経済成長できた国は政府支出を増やせているだけかもしれないじゃないですか?
仰ってるのはAかもしれない、Bかもしれない、だからAだって言ってるのと同じなんですよ
だから、政府支出を増やさずして経済成長した国というのがほとんど存在しないということですね
政府支出を増やした国ほどやっぱり経済成長しているわけですよ
それはその2つが連動している。ただそれだけじゃないですか。
それ以上でもそれ以下でもない。
もしかしたら政府支出をちゃんとしたから経済成長したっていうあなたのシナリオ通りかもしれない、でもそうじゃないかもしれないじゃないですか
そんな中でお金を刷れば経済成長するって断言するって無責任すぎませんか?
それでみんなに100万円配ってハイパーインフレが起きたらどうするんですか?
年間100万円程度ではハイパーインフレは起きない
なんでそんなことを断言できるんですか?
国内のGDPは500兆円あるわけですから…
ちょっとまって下さいよ
過去数年でコロナ対策っていう名目で、いろんな国がお金を刷って配りまくったわけですよね
配りまくったって言ってもせいぜい数十万の給付金程度じゃないですか?
その程度のことをやっただけで、全世界で10%ぐらいのインフレが起きて、それで大変なことになってるんですよ
そんな中で全国民に100万円配ってもハイパーインフレが起きないってなんで断言できるんですか?
んー・・・金額的にそこまで大きい金額ではないというのが1つと・・・
それはあなたの感想ですよね?
インフレ率が高くなったというのは、これは戦争が原因であることが一番大きいですから
それこそ典型的な経済評論家のただの感想じゃないですか
そうかもしれないっていうただそれだけで、100個あり得るシナリオのうち1個を抽出して、それが起きるって断言しているだけじゃないですか
それは来年世界恐慌が起きますって断言し続けているよくわからない経済評論家の人たちと全く同じです
実際、他の国では経済成長がしっかり起きていたということです
じゃあ僕は代わりの仮説を提示しますよ
日本人はサボってしまった、韓国人は頑張っていた、だから韓国人は経済成長出来て日本人はできなかった、ただそれだけかもしれないじゃないですか
そういうところじゃないですよ
お金を配り損ねてしまったから経済成長しなかった
なんでそう言えるんですか?
他の国はしっかり経済成長しているし、実際一律給付金を配ったら消費が増えたということですね
ほんとに大丈夫ですか?(苦笑)
はい、これしか他に原因はないですから
政府支出が必ず先だっておっしゃるのは、それは分かりませんよねっていうのはその通りだと思います
そもそもは横ばいの話をしたかったので、横ばいだったってことについて、これは失敗だったというのは池戸さんの主張だと思うんですね
成田さんはそもそも、コロナの短期間だけじゃなくて20年30年横ばいだったことについては、ダメだったとは思っているのかどうかというのは?
普通にダメなんじゃないですか
司会:その原因については今意見が分かれてますと。成田さんは逆にいうと、そこは何だったのかと。なぜ横ばいだったのでしょうか?
よくわからないですね
司会:笑 分かってたらこんなになってないと
でも他の国と比べて、本当になぜ日本だけこうなってしまったんだろう?
いろんな原因の可能性があって、いろんな原因が組み合わさっているんじゃないかと、勝手に予想しています。
まず1つに高齢化がありますよね。高齢化して、労働生産性とか効率みたいなものが落ちているかもしれない、働ける絶対量が減ってきている、最近だと人口がどんどん減りはじめている、人口が減るぐらいの事が起き始めたら経済成長も止まりそうだよねっていう話もある
それ以外に、もしかしたら中国とかアメリカが作り出せたような超巨大な新しい産業を作り出すことに失敗してしまった
それはもしかしたら超少数のとてつもない起業家を排出する仕組みがたまたまここ数十年の日本が作れなかった、それっぽい人たちが出てきても特捜検察とか出てきて逮捕しちゃうみたいなことによって芽がつまれたのかもしれないですよね
そういう色んな要因があると思うんですよ
多分いろんな要因が組み合わさって、とても複雑なことが起きていると思うんですよ
そういう複雑なことが起きている時に、何の根拠も論理もなしに、何かが特定の原因だ、その原因さえ摘めば問題が解決しますって断言するのは、ただの情弱ビジネス以上でも以下でもないじゃないですか
そういう人たちがテレビとかネットとかにはびこっているということを、心の底から軽蔑しているということです
司会:はい、ありがとうございます。
その横ばいと仰っていることっていうのは、ある種の気の持ちようという意味で言うと、必ずしも成長しなきゃいけない、発展しなきゃいけないみたいな話になってきて、これをどう考えるか
成長ってなんですか、それはGDPなんですか?平均年収なんですか?出生率なんですか?と
それはまあGDPが増えるということで良いと思います
GDPが増えれば賃金にしても企業利益にしても増えるでしょうし、所得が増えれば結婚して子供を作ろうという人も増えてくるでしょうから幸福度もあがるでしょうから、根幹はGDP
僕はもう少し広くとらえてもいいような気がするんですよね
GDPって100年ぐらい前に主にヨーロッパの経済学者の人たちが作った指標なんですよね
当時手に入るデータとか経済統計みたいなものに基づいて国の経済力、もっと言えば当時戦争で戦う能力がどれぐらいあるかみたいなことを測るために作られた指標なんです
そう考えるともうちょっと広い意味での人間の豊かさとか幸福みたいなものを捉えようとすると、他の要因というのも組み入れるのが自然なんじゃないかな?
最近だと他の様々な健康とか寿命とか主観的な幸福度みたいものも組み込むような形にGDPとか成長の指標にするのが自然なんじゃないかな?と
パネラー:なぜ日本は政府支出をやらなかったのでしょうか?
やらなかったには、やらなかったなりの理由があると思うんです
政府が通貨発行ができることを知らなかった
財源調達はできるんだということを知らずに、国債発行したらこれ以上国の借金が増えて大変だということで、みんな控えてしまった
経済学者が無知だった
国債を発行して財政破綻することもない
ですから他の国も国債発行残高を増やしていっている
女性:政府支出を増やすとしたら、その投資先、使い道はどうお考えですか?
全体的にまんべんなく投資したほうがいい
ゾンビ企業も安定させたほうがいいし、AI技術やロボットなどの生産性を上げるところに対してもしっかりお金をだしていく
司会:成田さん、いかがでしょうか?
…まったくわからないんですが(苦笑)
さっきの話に戻ると、なんで政府支出をしないのかっていうことで言うと、政府支出を増やしましょう、極端な場合お金を刷ってくばりましょうってことをやって、みんなが使い始めたとするじゃないですか、そうしたら世の中に出回る紙幣の数が増えちゃうんで、普通に考えるとインフレが起きても全然おかしくないじゃないですか
一度インフレが起き始めるとどうにかそれを抑えたくなりますよね
だけど、一度1月100万円もらえますってなった国民が、その100万円を取り上げられることを許すかってなると、多分許さないと思うんですよ
そう考えると日本みたいな民主国家では、一度政府支出を増やし始めると、なんか問題が起きてもそんな簡単には元の水準には戻せないんだと思うんですよ
薬打ち始めちゃったみたいなもんで
そういう政治と経済のものすごく難しいバランス関係があるので、政府支出を増やすときには慎重にならなくちゃいけないって考えて、そのために色々な制度を作ってきたっていうのがここ100年ぐらいの様々な国の歴史
日本も原理的には日銀がお金刷り、それで政府が発行した国債を引き受けて、そのまんまお金をばらまくってことはできるっちゃできますよね
でもそれをやるとやばいっていうことで、それをやる時には国会の審議が必要といろんな制約を課していると思うんですよ
なので政府支出に何のリスクもないみたいなものは全然根拠がないと思っていて、もちろんリスクがなくうまくいく可能性もゼロじゃないとは思いますよ
ただ同じようにインフレが起きてみんなが悲惨な目に遭う可能性だって十分あるということだと思います
だからそこは金額によるという話で、さすがに毎月100万円は多いですから年間100万円ぐらいが妥当だということを言っている
その年間100万円っていう数字、特に根拠がないんですよね?
それだけでは人々は(労働を)やめるということでは・・・
要するに適度な政府支出、それが韓国でいうところの10%ぐらいだっていうことなのでしたら、どれぐらいの額をイメージされていますか?
政府支出を毎年10兆、20兆増やすという感じで…
一般論で言えば、いくら発行するのかと同時に、それを何に使うのかが大事だと思うんですよ
何の価値も作り出してないゾンビ企業に投資するのと、今後100年間頑張って働いてくれる新しい子供に投資するので、同じわけがないと思うんです
長い目で見たときに社会とか経済の成長とか豊かさに貢献してくれそうなものに投資するってことが大事だっていうごくごく当たり前のことがいくつかある
司会:そういう意味で、(重視すべき指標は)GDPなんですか?出生率なんですか?って変わってきますよねって事になると思うんです
そういう所に投資することを全く否定していませんので
別に選ぶということはない、全体的な総量を上げることが一番大事
…全体として思うのは、さっきからずっと経済学者がとか、国がみたいなことをおっしゃるんですけど、経済学者とか国の偉い人たちが何かを考えて、何かやれって一言言ったから国全体の経済が成長するっていう世界観自体が何の根拠もないんじゃないかと思うんですよ
経済ってそんなに単純じゃないからこそ、一億人も居る人たちがそれぞれ何をやったらいいかわからないまま試行錯誤して色んな会社を始めては、一部はうまくいく、ほとんどはダメになるってことを繰り返すわけじゃないですか
だからその経済を動かしていくっていう時には、何か人が結果として求めていたようなサービスとか財とか新しく作り出す、それが価値があったからそれにお金を払いたい人が生まれる、だからそのものに値段が付く、その結果としてみんなも稼げるっていう当たり前の循環があるわけじゃないですか
こういう経済の実態のことを議論せずに、国の中にいる審議会の経済学者が何をするべきか決めるだけで経済成長できるっていうこと自体が根拠がないと思うんですよ
その根拠のないことをネットに居る人たちが妄想で描いた世界像に基づいて議論するから、例えば竹中平蔵さんみたいな人が日本経済をダメにしたとかっていう議論になるんだと思うんですよ
ちょっと考えれば竹中平蔵さん1人が日本経済をダメにしたり良くしたりできるわけないじゃないですか
まあ、そこは小泉首相に重用されたっていうのがあるんじゃないですか?
それはポジションに対する劣等感だと思いますよ
経済学者が経済を変えられるわけがないじゃないですか、そんな簡単に
でもやっぱりそれだけ小泉さんが竹中さんを…
何も新しい商品とか産業とかサービスを作り出せてないのに、国が何かをやっただけでなんで経済とか豊さが伸びるって…(苦笑)
作り出せてないのが緊縮財政で政府支出を増やさなかったのが根本的な原因だっていうのが私の議論ですから…
というのが、何も根拠がないなと私は思いました
(書き出し終わり)
MMT理論に関する議論ポイント
上記の議論の中でMMT理論に関する主なポイントは大きく分けて次の2つにまとめられると思います。
政府支出が経済成長に繋がった根拠がない
政府支出を増やせば経済成長に繋がった根拠を示していない。
2つの現象が関連しているように見えるから因果関係があると思い込んでいるだけにすぎない。
因果関係があるとするならそうである根拠や理論を示すべきだけど池戸氏は示すことができない。
インフレが起きない根拠もない
お金を配るとインフレのリスクがあり、実際に今の世界経済はコロナ禍の中で配った給付金の影響によるインフレで苦しんでいる。
お金を配るということはそういったインフレリスクがあるはずなのに、それを軽視もしくは無視し、根拠もなく”いくらぐらいなら大丈夫”と言っているのは無責任ではないか?
成田先生から池戸氏への忠告(レクチャー?)
池戸氏とMMT理論については論ずるに値しないと判断した後の成田先生は、池戸氏の経済への捉え方についての違和感について言及する部分が増えました。
そのポイントは次のような部分になります。
数ある選択肢(シナリオ)の中の1つを抽出しているにすぎない
数ある選択肢の中から1つを抽出し、これが正解だ!と言っているに過ぎない。そうである根拠は何もないのに、そのシナリオが正しいと断言するのは無責任でもある。
経済はそんなに単純ではない
経済を構成する要因は多くあり、それが複雑に絡み合っている。こうすればこうなるという単純なものでもない。
経済の実態を見ていない議論
サービスや財を生み出していくことで成長していくという経済の実態を議論せずに、国の中枢にいる経済学者が指示すれば経済成長するという発想こそが根拠がない。
何もサービスや産業を生み出したわけでもないのに、経済が伸びたり落ちたりするわけがない。
動画を見て僕が思う事
成田先生の動画に対して、経済クソ素人の僕が何か意見をすることは特にないのですが、池戸氏に対して感じる違和感というか疑問のようなものを最後に書かせてもらいます。
いわゆる蛇足を書きます。
議論をする環境に居ないことが大きな問題では?
書きおこしをするためということも含めて動画全体を何度も何度も見返しました。その上で感じたのは、「なぜこの程度の批判でくじけるような理論を持ってきたのだろう?」です。
成田先生のツッコミは一般的な感覚なら当然出てきます。
現象を羅列しただけのグラフを見せたところで、それは何も語っていないことがあるからです。
僕が昔読んだ統計に関する本で知ったのが、ニコラスケイジの映画が公開された年には水難事故が増えるというグラフです。
グラフでは相関関係があると見られますが、当然そこには何も因果関係がありません。たまたまです。
でも、ニコラスケイジの映画が公開された年に水難事故を起こそうとする人が居て、その人の犯行だったと証明されれば因果関係があるとなります。
そういった犯罪が確認されていないのなら、そのグラフはただ2つの現象が連動しているグラフでしかありません。犯罪という根拠を示せて、始めてそのグラフの2つの項目の関連性が証明されます。
だから、なぜ関係があると断言できるのか?は持論の肝となる部分なのに、なぜそれがないままなのだろう?という疑問がずっと残っていました。
そこで考えられるのが、議論する正しい環境の中にいないのでは?ということです。
池戸氏の意見を正しい批判を寄せる人が周りにいない、もしくは批判する人を排除する環境の中にいるからあのような論拠の乏しい意見に自信満々になれたのではないか?と思います。
見方を変えると、池戸氏もある意味では被害者だと思うんです。
彼の意見を正しく批判し正しく問うてくれる人が周りに居れば、彼の意見はもっともっと磨かれていたと思います。
なぜそう言い切れるのだ?こういう角度ではどうなんだ?と議論を重ねながら磨かれた理論を引っ提げてあの場に出てきていたなら、成田先生も耳を傾け、それがきっかけで一気にMMT論に追い風が吹くチャンスだったかもしれません。
でも、そういったブラッシュアップがまったく為されていない状態であの場に出てきて、当たり前に聞かれるレベルの初手の質問でもう足腰を折られてしまいました。
これでもう彼の言う事は根拠がない思い込みというレッテルが貼られることになりますから、あの場での議論は池戸氏に風が吹くことはないし、今後池戸さんが活躍できる場面は限定されると思います。
少なくとも彼が望んでいるであろう経済に関する要職には就けないはずです。なんの根拠もない持論を疑問を持たずに信じてしまう人に経済のかじ取りをさせるのは危険でしかありませんから。
MMT論としても池戸氏としても一つの分岐点になったかもしれません。
事実、僕自身MMT理論に賛成寄りの関心を持っていました。でもMMT論者の代表格の一人として出てきた池戸って人はこの程度なのか…と思ったことでMMT論そのものへ一気に懐疑的になりましたし、今後池戸氏の言う事には色眼鏡で見てしまうと思います。
あの動画を見てそういう風に感じた人は多いと思います。
なぜそうなるのかを考えると、正しい議論をする環境の中に居ないからであり、イエスマンで固めた集団の中で根拠を問われることもなくイエスイエスと言われ続けたことで誤解を醸成してしまったのだと思います。
つまり彼の身近なところで無根拠にMMTを推した人たちの責任でもあります。
だから本来はこの対談をきっかけに持論を磨くための環境に身を置き、批判を喜んで受けるという立ち位置に身を置くことが池戸氏が次のレベルに行くための一歩だと思いますが、ネットでのその後の池戸氏の言動を見るにつれ、「自分は正しい」に固執し、周囲も甘い言葉をかけるだけのやり取りが見られますので、それは期待できそうにありません。
中には世界トップクラスの大学のイエール大学で経済を教えている成田氏に経済を分かってないと噛みつく素人も居て無茶苦茶です。
世界トップクラスの場で活躍しているという意味では、井上尚弥にボクシングの素人と言っているようなものです。
そういう客観性を欠いた人が自論と合わない人を闇雲に攻撃して倒そうとするのは、武力行使で相手をねじ伏せればいいという発想と同じ野蛮な行為だと僕には映りますし、あの界隈はそういう界隈なんだろうな…とも感じます。
MMTを信奉するなら常にMMT論者に批判を向けるべきで、それが出来ていれば今回の対談のように、情弱ビジネスと言われたり、軽蔑すると言われたりはしなかったと思います。
そういう意味では正しい議論をする環境というものが今のネット、ないしは日本には育ってないんだろうな…と思ったりもしました。
以上蛇足でした。